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【獣医師監修】犬の噛み癖の直し方を解説!原因を理解して信頼関係を築くしつけとは

【獣医師監修】犬の噛み癖の直し方を解説!原因を理解して信頼関係を築くしつけとは

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愛犬との暮らしの中で、「噛み癖」に悩んでいる飼い主は少なくありません。じゃれているだけと思っていても、だんだん噛む力が強くなったり、特定の人や状況で唸りながら噛み付いたりすると、不安になってしまいます。しかし、犬が噛むのには必ず理由があります。

この記事では、犬がなぜ噛むのか、その原因を深く掘り下げ、今日からすぐに実践できる正しいしつけの方法を具体的に解説します。また、良かれと思ってやりがちな、実は逆効果なしつけ方も紹介します。愛犬の気持ちを理解し、お互いの信頼関係を築きながら、穏やかで楽しい毎日を取り戻しましょう。

犬が噛むのは習性!理由のない噛み癖はない

おもちゃで噛んでいる犬
犬にとって「噛む」という行為は、ごく自然な習性の一つです。手を使って物事を確かめられない犬は、口を使って情報を得たり、コミュニケーションを取ったりします。そのため、噛むこと自体を完全になくすことはできません。大切なのは、なぜ噛むのか、その背景にある愛犬の気持ちを理解することです。理由のない噛み癖はなく、その原因は様々です。ここでは、犬が噛む主な理由を5つのパターンに分けて見ていきましょう。

子犬の歯の生え変わりによるむずがゆさ

生後4ヶ月から半年頃の子犬は、乳歯から永久歯へと歯が生え変わる時期を迎えます。この時期、人間の子どもと同じように歯茎にむずがゆさを感じ、その不快感を解消するために、手近なものを何でも噛んでしまうことがあります。家具やスリッパ、そして飼い主の手もその対象になりがちです。これは成長過程における一時的な行動ですが、この時期に「人の手を噛んではいけない」というルールを教えることが、将来の噛み癖を防ぐ上で非常に重要になります。

 

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飼い主の気を引きたい甘えや遊びの延長

犬は飼い主にかまってもらうのが大好きです。特に子犬の頃、甘噛みをしてきた際に「かわいい」と反応したり、そのまま遊びを続けたりすると、犬は「噛めば注目してもらえる」「噛むと遊んでもらえる」と学習してしまいます。この学習が、成犬になってからも続く要求吠えならぬ「要求噛み」につながることがあります。遊びの延長であったとしても、人の手を噛むことは受け入れてはいけない、という毅然とした態度が必要です。

ストレスや運動不足による問題行動

犬は日々の生活の中で、様々なストレスを感じています。例えば、散歩の時間が短い、留守番の時間が長い、家族とのコミュニケーションが不足しているといった状況は、犬にとって大きなストレス源となります。有り余ったエネルギーや満たされない欲求を、身近な物を噛むことで発散させようとするのです。この行動は、犬からの「もっと運動したい」「もっと一緒にいたい」というサインなのかもしれません。

 

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恐怖心から自分を守るための防衛本能

犬は恐怖や不安を感じたとき、自分自身を守るために噛み付くことがあります。これは「防衛性攻撃行動」と呼ばれ、犬にとっては本能的な行動です。例えば、知らない人に突然触られたり、寝ている時に驚かされたり、過去のトラウマを想起させるような状況に置かれたりすると、自分を守る最後の手段として歯を剥き、噛み付いてしまうのです。この場合、犬を叱るのではなく、犬が何に恐怖を感じているのかを理解し、安心できる環境を整えてあげることが大切です。

病気やケガによる痛みが原因の場合

もし、いつもは穏やかな愛犬が急に噛むようになったり、体の特定の部分を触られるのを極端に嫌がったりする場合は、病気やケガが原因で痛みを感じている可能性があります。関節炎や皮膚病、内臓の疾患など、外見からは分かりにくい痛みを抱えているのかもしれません。「触らないでほしい」という意思表示として、噛むという行動に出ているのです。このような変化に気づいたら、自己判断でしつけを始める前に、まずは動物病院で獣医師に相談してください。

すぐに実践できる犬の噛み癖を直すしつけ方法

しつけられている犬
犬が噛む原因を理解したら、次はいよいよ実践です。ここでは、誰でもすぐに取り組める噛み癖の直し方を、具体的な手順に沿って解説します。しつけで最も大切なのは、一貫性を持って根気強く続けることです。家族全員でルールを共有し、同じ対応を心がけましょう。愛犬との信頼関係を第一に、焦らずじっくりと取り組んでください。

手順1:噛んでも良いおもちゃを与え欲求を満たす

犬の「噛みたい」という欲求を無理に抑えつけるのではなく、正しい対象へと導いてあげることがしつけの第一歩です。「人の手や家具は噛んではいけないけれど、このおもちゃなら噛んでも良い」というルールを教えましょう。犬用の噛むおもちゃを常に用意しておき、手を噛みそうになったら、すぐにおもちゃを口元に差し出して興味をそらします。そして、おもちゃを上手に噛んで遊べたら、たくさん褒めてあげてください。「これを噛むと褒められる」と学習させることで、噛んで良いものと悪いものの区別がつくようになります。

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手順2:噛まれたら「痛い」と伝え遊びを中断する

もし手を噛まれてしまったら、感情的に叱るのではなく、冷静に、かつ犬が理解できる形で「いけないことだ」と伝える必要があります。噛まれた瞬間に、低く、短く「痛い」あるいは「ダメ」と伝えます。この時、甲高い声を出すと犬が興奮して遊びだと勘違いしてしまうため、落ち着いたトーンを意識してください。言葉を伝えたら、すぐにその場で遊びを中断します。犬からスッと体を離し、背中を向けて一切の反応を示さないようにしましょう。

手順3:部屋から退出して「いなくなる」と学習させる

手順2で遊びを中断しても犬が興奮して噛み続けてくる場合は、より明確に「終わり」を伝える必要があります。「痛い」と伝えた後、何も言わずにその部屋から退出しましょう。犬を一人残して、1分ほど別の部屋で待ちます。これは、犬にとって大好きなおもちゃであり、遊び相手でもある飼い主がいなくなってしまう、という非常に分かりやすい罰になります。これを繰り返すことで、犬は「人の手を噛むと、楽しい時間が終わってしまう」と学習し、次第に噛むことを躊躇するようになります。

噛み癖防止グッズを活用するのも一つの手

様々な方法を試してもなかなか改善が見られない場合には、噛み癖防止用のグッズを補助的に活用するのも一つの選択肢です。例えば、犬が嫌う苦い味の成分が含まれたスプレーを、噛まれやすい手や家具に塗布しておく方法があります。犬がそこを噛んだ時に不快な味を経験することで、「ここは噛むと嫌な味がする」と学習します。また、散歩中の噛み癖が出る場合は、他の人や犬に噛みつくのを防ぐため口輪をするのも一つの方法です。

ただし、これらはあくまで補助的な手段であり、根本的な原因解決にはなりません。前述したしつけと並行して、うまく活用することが大切です。

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やってはいけない噛み癖のNGなしつけ方

噛んでいる犬
愛犬の噛み癖を早く直したいという焦りから、つい間違った対応をしてしまうことがあります。しかし、不適切なしつけは問題を悪化させるだけでなく、愛犬との大切な信頼関係を根底から揺るがしかねません。犬は恐怖で支配されるのではなく、信頼できるリーダーを求めています。ここでは、絶対に避けるべきNGなしつけ方を3つ紹介します。これらの方法では、噛み癖は決して改善しません。

大声で叱ったり叩いたりして恐怖を与える

犬が噛んだ時に、大声で怒鳴りつけたり、鼻先を叩いたりする体罰は絶対にしてはいけません。このような行為は、犬に強い恐怖心とストレスを与えるだけで、なぜ叱られているのかを正しく理解させることはできません。むしろ、「飼い主は自分に危害を加える怖い存在だ」と認識してしまい、信頼関係は完全に崩れてしまいます。その結果、恐怖心からさらに自分を守ろうとして、より攻撃的になる悪循環に陥る危険性があります。

マズルを掴むなど犬を力で制圧する

マズル(鼻口部)を強く掴んで犬の動きを制圧する方法は、一見効果的に見えるかもしれませんが、非常に危険な行為です。犬にとってマズルは非常に敏感な部分であり、そこを力で押さえつけられることは、強い苦痛と恐怖を伴います。このような支配的な方法は、犬の反発心を煽り、飼い主への不信感を増大させるだけです。専門的な知識を持たないまま行うと、犬にケガをさせたり、飼い主自身が本気で噛み返されたりするリスクもあります。

噛む要求にそのまま応えてしまう

甘噛みされた時に「やめて」と言いながらも、撫で続けたり遊びを続けたりするのも、よくある間違いです。犬は「噛む」という行動と、「要求が通った(遊んでもらえた)」という結果を結びつけて学習してしまいます。その結果、「もっとかまってほしい時」「おやつがほしい時」など、自分の要求を通すための手段として噛むようになってしまいます。要求に応えず、一貫して「噛んだら楽しいことは終わる」というルールを徹底することが重要です。

成犬になってからの噛み癖でも改善は可能

おもちゃを噛み合っている2頭の犬
「子犬の頃にしつけられなかったから、もう手遅れかも」と諦めてしまう必要は全くありません。確かに、成犬になってから癖を直すのは、子犬に教えるよりも時間と根気が必要になる場合があります。しかし、正しいアプローチで向き合えば、何歳からでも改善は可能です。成犬の噛み癖は、その犬が長く過ごしてきた環境や経験に起因することが多いため、より丁寧な原因分析と対応が鍵となります。

まずは噛む原因となっている環境を見直す

成犬の噛み癖の場合、まずはその行動を引き起こしている根本的な原因を探り、生活環境全体を見直すことから始めましょう。運動量は足りているでしょうか。飼い主とのコミュニケーションの時間は十分に取れているでしょうか。犬が安心して休める、自分だけのスペースは確保されているでしょうか。ストレスや不安を感じる要因を取り除き、犬が心穏やかに過ごせる環境を整えることが、問題行動の改善に向けた最も重要なステップです。

一貫性のあるルールを家族全員で共有する

しつけにおいて最も大切なことの一つが、「一貫性」です。特に成犬のしつけでは、この一貫性がより一層重要になります。例えば、お父さんは噛まれても許すけれど、お母さんは厳しく叱る、といったように家族内で対応が異なると、犬は何が正しくて何が悪いのかを学習できず、混乱してしまいます。「噛まれたら、全員が同じように遊びを中断し、その場を離れる」など、明確なルールを定め、家族全員がそれを徹底して守ることが、改善への近道です。

専門家への相談も検討する

様々な努力をしても改善が見られない場合や、噛み方がエスカレートして身の危険を感じるような場合には、決して一人で抱え込まないでください。問題行動の専門家であるドッグトレーナーや、行動診療科のある動物病院の獣医師に相談することを強く推奨します。専門家は、犬の行動を客観的に分析し、その犬の性格や家庭環境に合った、より専門的なトレーニングプランを提案してくれます。正しい知識を持つプロの助けを借りることは、決して恥ずかしいことではありません。

まとめ

おもちゃを噛んで遊ぶ犬
犬の噛み癖には、歯の生え変わりからストレス、病気まで必ず何らかの原因が存在します。その原因を正しく理解し、叩いたり叱りつけたりするのではなく、根気強く一貫したルールで向き合うことが改善への鍵となります。愛犬との信頼関係を大切にしながら、お互いが安心して暮らせる幸せな毎日を築いていきましょう。

この記事を監修した人

小松 智彦

小松 智彦

獣医師。北海道大学大学院獣医学研究科卒。
20年以上獣医師・研究者として勤務する傍ら、学術論文や業界誌への執筆も多数経験。また幼少期からたくさんの動物を飼育してきたことから飼い主に寄り添える動物博士として活躍中。

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