服についた墨汁の落とし方|家にあるもので落とすコツと事前の対策方法
服についた墨汁の落とし方|家にあるもので落とすコツと事前の対策方法

この記事をシェアする!
黒色で目立ちやすいうえに、洗濯するだけでは落とせない墨汁。なかなか落としきれない強敵と思われがちですが、実は身の回りにあるものを利用して落とせる可能性があります。
本記事では、服についてしまった墨汁の落とし方や、時間がたった汚れを上手に落とすコツを解説します。
目次
墨汁の落とし方を知るための基礎知識
ほかの汚れと比べて、とくに落としにくい墨汁。服などに付着したまま時間が経つと、さらに落ちにくくなってしまいます。原因は墨汁を構成する成分。昔ながらの製法と、近年一般的になりつつある製法を比較しながら、墨汁の落とし方を知るための基礎知識として、最初に落ちにくい理由を解説します。
墨汁の成分「カーボンブラック」
昔ながらの製法で作る墨汁の主成分はススとニカワです。ススは、松の木を燃やしたり植物油を燃やしたりして作る製法があります。ニカワは動物性の素材で、形を保ち、紙の繊維に墨を接着させる役割を果たします。
しかし近年では、ススの代わりにカーボンブラックを、ニカワの代わりに合成樹脂を使った墨汁が主流です。
カーボンブラックは、石油の採掘時に製造される粒子で、水と油に溶けない不溶性であるのが特徴。また、合成樹脂には、乾燥したカーボンブラックを紙に定着させる役割があります。
時間が経つと繊維の奥まで入ってしまう
墨汁が服の繊維に付着すると、奥深くまでしみ込んで落ちにくくなってしまいます。これは、接着剤のような働きをもつニカワや合成樹脂が、繊維に強く定着しているためです。
さらに、カーボンブラックが非常に細かな黒色の粒子であることも、墨汁を落としにくい理由の一つ。カーボン成分は墨汁へ加える前に、ナノサイズまで小さい粒子に変化します。
小さな粒子に変化したカーボンブラックが繊維の細かい部分にまで入り込み、合成樹脂の接着力で定着するため、時間が経過するほど墨汁が落ちにくくなるのです。
墨汁の落とし方と注意点
服に墨汁がついてしまった場合「すぐに洗濯機に入れなければ……」と思うかもしれませんが、これはNGです。
墨汁がついた部分を水で濡らすと落ちにくくなるほか、洗濯機の中でほかの衣類に墨汁が付着してしまうおそれがあります。
まず、付着した墨汁をきれいに落としてから、洗濯機に入れるようにしましょう。
墨汁の落とし方|家にあるものを活用する
洗濯したり洗面台で洗ったりするだけでは落としにくい墨汁ですが、実は家庭にあるもので落とせる可能性があります。
ここでは、墨汁の効果的な落とし方を5つの方法に分けてご紹介します。墨汁がついた服の種類やシミの範囲などに応じて、使い分けてみてください。
なお、服の素材によっては水洗いができないものや漂白剤が使えないこともありますので、事前に洗濯表示を確認しておきましょう。また素材によっては色落ちや変色の可能性があるため、目立たない部分で試してからおこなうと安心です。
塩素系漂白剤
塩素系漂白剤(ハイターなど)を使った墨汁の落とし方です。使用する際は、衣類を傷めたり色落ちしたりするおそれがあるため、墨汁が付着した部分のみに塗布しましょう。
落とし方の手順は次のとおりです。
- 墨汁が付着した部分に直接ハイターを塗布する
- 約30分放置する
- お湯でよくすすぐ
塩素系漂白剤の作用で墨汁の黒色はほとんど落ちますが、汚れの状態によっては若干の色残りが発生する場合もあります。
変色や脱色を防ぐため、色柄物の衣類への使用は控えたほうが安心です。また、白色の生地でも使用されている素材の種類によっては変色してしまう可能性があります。塩素系漂白剤を使用する前には、必ず洗濯表示を確認してください。
酸素系漂白剤
酸素系漂白剤は掃除でも活用できる便利なアイテムです。塩素系漂白剤と比べて色落ちしづらいため、色柄物の衣類におすすめ。つけ置きをすることで、こすり洗いの時間を短縮できます。
準備するものは次の2つ。
- 酸素系漂白剤(オキシクリーンなど)
- 歯ブラシ
墨汁の落とし方の手順は次のとおりです。
- 45~50℃のお湯に酸素系漂白剤を溶かす
- 1~3時間つけ置きする
- 優しくこすり洗いする
- 通常どおり洗濯する
つけ置きで落としきれなかった汚れは、酸素系漂白剤に少量の水を加えペースト状にしたものを塗布し、こすり洗いを試してみてください。
重曹
家中のさまざまな掃除に活用できる重曹でも、墨汁を落とすことができます。重曹は粗い粒子で構成されており、研磨剤としての効果もあります。水に溶けにくい性質を生かして、ペースト状にすると汚れに直接アプローチできます。
準備するものは次の3つです。
- 重曹
- 歯ブラシ
重曹に水を少量含ませ、ペースト状にし、歯ブラシで繊維の奥まで塗り込みましょう。
以下は墨汁の落とし方の手順です。
- 重曹に水を少量加える
- 1で作ったペーストを墨汁が付着した部分に塗布する
- 歯ブラシで約2分間こする
- お湯でそそいでから洗濯する
なお、重曹と酸素系漂白剤を1:1で混ぜてペースト状にすることで、アルカリ度が高くなり、洗浄力が高まります。ただし、表面のシミは落とせても、繊維の奥深くまでしみ込んだ墨汁は落ちにくいのが難点。墨汁が服についてからすぐに対処することが重要です。
洗濯石鹸
液体洗剤よりも汚れにピンポイントで使えるのが洗濯石鹸です。準備するものは洗濯石鹸(ウタマロなど)のみ。
墨汁の落とし方の手順は次のとおりです。
- 墨汁が付着した部分を水で湿らせる
- 外側から中心に向けるように、洗濯石鹸を汚れ部分に塗り込む
- 優しくこすり洗いする
- 洗濯する
手順どおりに洗っても墨汁汚れが残る場合は、こすり洗いのあとにぬるま湯につけてから洗濯したり、不要な布を服の下に敷き、歯ブラシで服の上からたたき洗いしたりするのがおすすめです。
使用する洗濯石鹸によっては蛍光増白剤を含んでおり、色柄物やきなりに使用できない場合があります。使用する際は洗濯石鹸の使用方法と、服の洗濯表示を確認してみてください。
住居用洗剤
住宅用洗剤を使う方法は、ほかの方法で落としきれなかったシミに対してもおすすめの落とし方です。
準備するものは次の3つです。
- 住宅用洗剤(マジックリンなど)
- 歯ブラシ
- 洗濯石鹸(固形)
墨汁の落とし方の手順は次のとおりです。
- 墨汁が付着した部分に洗濯石鹸をこすりつける
- 濡らした歯ブラシで優しくこすり洗いする
- 石鹸を洗い流す
- 住宅用洗剤をしみ込ませる
- 濡らした歯ブラシで優しくこすり洗いする
- シミ汚れが気にならなくなるまで1~5を繰り返す
- 通常どおり洗濯する
住宅用洗剤のみで落とすのではなく、洗濯石鹸も活用して汚れにアプローチするのが墨汁の落とし方のポイント。1~5の手順は、繰り返し丁寧におこなってみてください。
墨汁落とし用の洗剤
墨汁落とし専用として作られた洗剤を使えば、より効果的にシミを除去できます。
墨汁の落とし方の手順は次のとおりです。
- 墨汁落とし用の洗剤をシミ部分にしみ込ませる
- よくもみ洗いする
- すすぐ
墨汁落とし用の洗剤は、粒子が細かく繊維に密着しやすい墨汁を落とすために作られたアイテム。ついてすぐのシミにも使用できるため、常備しておいてもいいでしょう。
歯磨き粉
歯磨き粉を使用して墨汁を落とす方法もあります。使用済みまたは使用しない歯ブラシを用意し、歯磨き粉をつけてシミの部分をこするだけ。
墨汁の落とし方の手順は次のとおりです。
- 墨汁が付着した部分を水で濡らす
- 歯ブラシに歯磨き粉を付けてこすり洗いする
- もみ洗い後に洗い流す
- 1~3を何度か繰り返す
歯磨き粉は粒が大きいタイプと粒が細かいタイプのどちらでも使用可能。簡単かつ安全にできる対処法ですが、ほかの方法と同様、墨汁が付着してから時間が経つと落ちにくくなるのが難点です。手元に適切な洗剤や漂白剤がないときの代用品として利用してみてください。
ご飯粒・デンプンのり
ご飯粒と洗濯用洗剤を混ぜて使えば、デンプンの粘着力を使って繊維奥まで入り込んだ墨汁を吸着して落とすことができます。なお、「ご飯粒がもったいない」という方はデンプンのりでも同様の効果が期待できますので、そちらを使うといいでしょう。
準備するものは炊いたご飯と使い捨てのフォーク、そして洗濯用液体洗剤や粉末洗剤です。ご飯粒に液体洗剤を混ぜ、粉末洗剤で粘り気を調節してみてください。
墨汁の落とし方の手順は次のとおりです。
- 墨汁が付着した部分を水で湿らせる
- ご飯粒または、洗剤とご飯粒を混ぜたペーストをシミ部分にのせる
- 使い捨てフォークで潰しながらこすりつける
- ご飯粒が黒くなったら洗い流す
- 1~4を黒い水が出なくなるまで繰り返す
ご飯粒の色が変わらなくなるまで繰り返すのがポイント。ご飯は余裕をもって少し多めに準備しておくのがおすすめです。
墨汁がつく前に!事前にできる対策方法
服に付着した墨汁を完全に落としきるには、多くの時間と労力がかかります。墨汁を使う頻度によっては、対処しきれない場合もあるでしょう。
そこで、あらかじめシミ汚れが残りにくい服や、目立ちにくい服、汚れてもよい服を着るのがおすすめ。また、墨汁ではなく、洗濯で落ちる書道液を使うことも一つの手です。
墨汁が服につく前にできる対策方法をご紹介します。
ポリエステル素材の服を着る
ポリエステルは吸水性が低く、墨汁が付着しても繊維が奥にしみ込みにくいのが特徴です。ポリエステル100%の生地でなくても、ポリエステルが半分以上含まれていれば同様の効果が期待できます。
墨汁のシミ汚れが落ちにくい綿素材が含まれていても、ポリエステル素材の性質できれいにシミを落とせます。また、汚れが落ちやすいといわれているウール素材もおすすめです。
黒い服や汚れてもいい服を着る
万が一墨汁がついても気にならないよう、黒色の服を着ることも一つの方法です。墨汁は黒一色のため、黒い服に付着してもシミはほとんど目立ちません。
また、墨汁を扱う機会が多い方は、汚れてもよい専用の服を準備しておくのもいいでしょう。さらに、墨汁のシミが目立ちにくい黒色を選べば、清潔感を保ったまま着回せます。
練習には洗剤で落ちる書道液を使う
服に付着したインクを落としやすい書道液も販売されています。お湯をかけるだけで黒色のインクが流れ出て、洗濯洗剤を使えばきれいに落とせます。
ただし、製品にもよりますが洗って落とせる書道液は基本的に色褪せしやすいため、清書用には向きません。洗って落とせる書道液は練習用に使用し、本格的な作品を制作する場合は清書用の墨汁を別途用意するなど、状況に応じて使い分けてください。
墨汁汚れの落とし方を試してみよう
落としにくいイメージの墨汁ですが、落とし方のポイントを押さえれば、家にあるものを使って落とせる可能性があります。
ただし時間が経てば経つほど落としづらくなるため、墨汁が服についたら乾かないうちに対処することが重要です。水洗いができなかったり、漂白剤が使えない素材の場合は、プロのクリーニング店に相談してみるといいでしょう。ぜひ本記事でご紹介した方法を実践してみてください。
部屋干しのコツ9選|洗濯物を早く乾かしてニオイを防ぐ方法を解説