シクラメンの育て方|初心者向けの栽培方法のポイントを解説
シクラメンの育て方|初心者向けの栽培方法のポイントを解説

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独特な形状の花びらが特徴のシクラメンは、栽培難易度が低く、ガーデニング初心者の方にもおすすめの植物です。室内で管理できるほか、品種によっては耐寒性があるため、ベランダ栽培も可能です。
シクラメンは多年草で、翌シーズンも花を楽しめます。ただし、長く楽しむためには夏越しの管理が必要です。本記事では、初心者の方にもわかりやすく、シクラメンの育て方のポイントや必要なものなどをご紹介します。
目次
シクラメンの基本情報
まずは、シクラメンの基本情報を確認しましょう。
科名 | サクラソウ科 |
属名 | シクラメン属 |
和名 | 篝火花(カガリビバナ)、豚の饅頭(ブタノマンジュウ) |
英名 | Cyclamen |
学名 | Cyclamen persicum |
原産地 | ヨーロッパ地中海沿岸地域、北アフリカ〜中近東 |
分類 | 多年草 |
販売時期 | 10~3月 |
開花時期 | 10~3月 |
耐暑性 | 普通 |
耐寒性 | やや弱い〜弱い |
特徴
シクラメンの原産地は地中海沿岸です。その地域では野生の豚が球根(塊茎)部分を食べていたため「雌豚のパン=sow bread」と呼ばれていました。明治時代に入り、シクラメンが輸入された際に、和訳して「豚の饅頭=ブタノマンジュウ」という和名が付きました。
そのほか、植物学者が下向きに反り返るようにして花が咲くシクラメンを見て「篝火(かがりび)のようだ」と発言したことから「篝火花=カガリビバナ」とも呼ばれています。
シクラメンは、花の形やカラーバリエーションが豊富で、花びらの枚数は5枚です。ハート型で濃い緑色の葉っぱが特徴です。
苗を購入する際は、病害虫の被害や花と葉が変色していないかを確認しましょう。購入してから最初の1か月程度は、肥料を施す必要はありません。それ以降は、基本的なお手入れをしっかりとおこなうことで、長く開花を楽しめるでしょう。
主な品種
シクラメンは「原種シクラメン」と品種改良された「ガーデンシクラメン」に大別されます。原種シクラメンは約20種ありますが、現在流通している品種のほとんどは「シクラメンペルシカム」から品種改良されました。
主な原種シクラメンは以下のとおりです。
シクラメン・ペルシカム
春に咲くシクラメン。ガーデンシクラメンを含む、園芸品種のシクラメンのベースとなった品種。
シクラメン・コウム
濃い紫色のシクラメンの原種。地植え・鉢植えのどちらも可能。コンパクトサイズのため寄せ植えに適している。
シクラメン・へデリフォリウム
地植え栽培が可能な品種。原種のなかでも寿命が長いことで知られており、草丈は10cm程度と小さいサイズ。
ガーデンシクラメンの主な品種は以下のとおりです。
ガーデンシクラメン・ビクトリア
耐寒性があり寒い時期も屋外で楽しめる。育てやすく寄せ植え向き。
ガーデンシクラメン・パピヨン
飛ぶチョウチョウのような丸みを帯びた花の形が特徴。
シクラメン・ジックス
花びらを下向きに咲かせるのが特徴。花持ちも良い。赤色の花が特徴。
シクラメン・ペチコート
下向きに咲き、ベルのようなかわいらしい花びらが特徴。コンパクトなサイズ感で、耐寒性に優れている。
シクラメンは品種によって栽培適温が異なるため、事前に確認しましょう。
シクラメンを育てるために必要なもの
シクラメンを育てる際に必要なものは、以下のとおりです。
- シクラメンの苗
- プランターや鉢
- 培養土(草花用・シクラメン用)
- 鉢底石と鉢底ネット
- 肥料(液体・固形タイプ)
- スコップ
- ジョウロ
- 園芸ハサミ
- マルチング材(バークチップなど)
苗を購入する際は、大小のつぼみが付いており、全体的に葉や茎が元気なものを選んでください。土から球根の頭上が確認できるものは、病気にかかりにくいといわれています。シクラメンは葉の枚数に比例して花が咲くため、元気な葉がたくさん付いた苗を選びましょう。
シクラメンの育て方
シクラメンをうまく育てるためのポイントについて、以下5つの項目に分けて解説します。
- 日当たり・置き場所・温度
- 水やりの仕方
- 肥料のやり方
- 葉組み・花がら摘みの仕方
- 植え替えの仕方
日当たり・置き場所・温度
まずは、シクラメンが育ちやすい環境を整えましょう。
栽培に適した環境は、以下のとおりです。
- 置き場所:日当たりが良く暖かい場所
- 温度:10℃~20℃(品種によって異なる)
春の3月中旬以降、日中は日当たりの良い屋外で管理します。ただし、雨に当たらないように注意が必要です。気温が10℃以下になる場合は室内で管理します。
5月以降は、屋外の涼しい日陰で管理してください。
梅雨は、屋外で雨が当たらず、風通しが良く明るい日陰で管理します。シクラメンを休眠させる場合は、日陰へと移動させましょう。9月中旬以降は、3月中旬以降の管理方法と同じです。
冬は、室内の日当たりが良い窓辺に置いて管理します。暖房が効きすぎるとシクラメンの株が弱ってしまうため、室内温度は20℃以下で管理してください。また、風が当たりすぎる場所も適していません。
ガーデンシクラメンの品種は耐寒性があるため、越冬対策をしないまま屋外で育てられます。ただし、霜に当たると株が傷んでしまい、枯死するおそれがあるため、ベランダなどの軒下で育てましょう。
水やりの仕方
水やりの仕方は、普通鉢か底面給水鉢かで異なります。普通鉢で育てる場合は、鉢土の表面が乾いたタイミングで、葉をめくり球根の頂部に水がかからないように注意しながら、株元へ水をたっぷりと与えてください。万が一花や葉に水がかかってしまうと腐る原因となるため、必ず株元から水を与えましょう。
底面給水鉢で育てる場合は、鉢の縁から水を注ぎます。夏の休眠時期以外は、受け皿の水が切れないように、様子を見ながら随時補給しましょう。休眠法(ドライタイプ)で夏越えさせる場合は、花が咲き終わる6月頃から植え替え前の8月頃までの間、水やりを断ちます。
ガーデンシクラメンの品種は非休眠法(ウェットタイプ)で育てるため、土が乾いたタイミングで株元に水を与えます。ただし、水を与えすぎると花がしおれたり、根腐れしたりするおそれがあるため注意してください。
肥料のやり方
開花後は週に1回液体肥料を与えることで、より長く開花を楽しめます。9〜5月上旬も、週に1回液体肥料を与えてください。夏の期間は、休眠株に肥料を与える必要はありません。非休眠株にのみ、2週間に1回液体肥料を与えましょう。
窓が付いた底面給水鉢の場合は、液体肥料を1000倍に稀釈(きしゃく)したものを鉢底に与えます。一方、窓の付いていない通常鉢の場合は、液体肥料を1000倍に稀釈したものを、水やりのときに一緒に与えてください。
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葉組み・花がら摘みの仕方
シクラメンの栽培では、月に1回「葉組み」をおこないます。葉組みとは、株の中心にある葉を外側の古い葉の下方へとひっかけることで、株の中心に隙間をつくる作業です。葉組みをおこなうと、株の真ん中に日光が良く当たるようになるため、小さなつぼみであっても生長して開花します。また、花を中央に集めることで、株の形を整える効果もあります。
シクラメンは秋になると生育がもっとも盛んになるため、葉組みを忘れずにおこないましょう。開花時は、こまめに実施することで形も良くなります。
「花がら摘み」も定期的におこないましょう。花がら摘みとは、花が咲き終えても散らずに残っている枯れた花=「花がら」を摘む作業です。咲き終えた花は放置せず、付け根の部分から指でつまんで、ねじりながら引き抜いてください。このとき、枯れた葉も取り除きます。咲き終えた花を摘むことで、次の花が咲きやすくなります。
植え替えの仕方
8月下旬〜9月上旬に植え替えをおこないます。植え替え前に球根の硬さを確認し、触れてみて柔らかい場合は腐っているため注意してください。
植え替えの手順は以下のとおりです。
- 球根に付着している土をすべて払い落とし、根を半分にカットする
- 昨年より一回り大きな植木鉢を用意する
- 球根が3分の1から半分程度地表に出るようにして植え付ける
植え替え後は、気温が下がるにつれて球根が成長します。やがて球根から白い根が出たら休眠成功のサインです。非休眠で夏越しさせた場合も、8月下旬〜9月に植え替えをおこないます。このとき、根を崩してしまわないよう注意してください。
シクラメンの夏越しの方法
シクラメンは多年草のため、翌シーズンも花を楽しめます。シクラメンを長く楽しむためには夏越しの準備が必要です。夏越しには、葉を付けたまま育てる「非休眠法(ウェットタイプ)」と、葉を取り除いて球根のみにする「休眠法(ドライタイプ)」の2つの管理方法があります。
夏越しの管理方法は、基本的に6月のシクラメンの状態を見て判断しますが、初心者の方は管理のしやすい非休眠法がおすすめです。
休眠法(ドライタイプ)
6月ごろに葉が9枚以下になっている場合は、休眠法(ドライタイプ)が適しています。花が咲き終えて、古い葉も黄色くなり枯れてきたら、休眠させるタイミングです。
休眠法(ドライタイプ)の手順は以下のとおりです。
- 葉をすべて根元から手で取り除いて球根だけの状態にして鉢土を乾燥させる
※手で処理することで切り口から入る雑菌の繁殖を抑えられる - 鉢土が完全に乾いたら、涼しく風通しの良い場所に置いて管理する
※この期間に水がかかると球根が腐ってしまうため、雨が当たらない場所で管理する - 9月中旬~10月ごろの気温が下がり始めたタイミングで鉢から取り出す
※このとき球根に付いている土は全て落とし、根を半分ほど切り落とす - 新しい土を用意し、地表から半分ほど出した状態で植え替える
※株を大きくしたい場合は一回り大きな鉢に植え替える - 植え替え後に水やりを再開する
水やり再開後にしばらくして球根から白い根が出始めたら、休眠成功のサインです。あとは屋外でしっかりと日に当てて新芽を出しましょう。寒くなり始めたら、室内で日当たりの良い場所へと移動させてください。
休眠法は球根を腐らせるリスクは低いものの、非休眠法と比べると開花期が1か月程度遅れてしまうため、花を楽しむ期間はやや短くなるでしょう。
非休眠法(ウェットタイプ)
6月ごろに葉が10枚以上付いている場合は、非休眠法(ウェットタイプ)が適しています。水やりの再開や休眠させる時期を気にする必要がないため、初心者の方にもおすすめの管理方法です。
非休眠法(ウェットタイプ)の手順は以下のとおりです。
- 風通しの良い屋外へと鉢を移動させる
- 土が乾いたタイミングでしっかりと水を与える
- (2)を繰り返し、併せて液体肥料も月に2回与える
非休眠法は、水やりや根腐れ、病害虫に注意して管理する必要があるため、やや手間がかかります。しかし、成長を止めずに夏越しをおこなうため、休眠法で管理した株よりも早く大きくなり、開花も1か月ほど早いのが利点です。したがって、年内の10〜11月ごろから開花を楽しめるでしょう。
シクラメンの病害虫対策
シクラメンを丈夫に育てるためには、病害虫対策も欠かせません。
シクラメンの栽培で注意すべき害虫や病気は以下のとおりです。
- アブラムシ
- ハダニ
- 灰色カビ病
- うどんこ病
アブラムシ
アブラムシは気温の上がる5〜9月ごろに発生しやすくなります。吸汁害虫のため、植物の生育を悪くします。
予防するには、特定防除資材の酢を原料とした製品を散布してください。アブラムシが発生した場合は、薬剤を使用して駆除しましょう。
ハダニ
ハダニは6月の梅雨明けから9月にかけて発生しやすい害虫です。植物に付くと葉に白い小斑点ができ、数が増えるにつれて、かすり状にまとまって見えます。
予防対策としては、特定防除資材の酢を原料とした製品を散布する方法が有効です。ハダニが発生した場合は、葉の裏面も洗い流すように勢いよく水を吹きかけるか、薬剤を使用して駆除しましょう。
灰色カビ病
灰色カビ病は、梅雨などの湿度が高い季節に発症しやすい病気です。発症すると植物の葉が黒く変色し、花にシミのような病斑を発生させます。また、咲き終えた花に発生することもあるため、花がらは早めに摘み取りましょう。
日当たりと風通しの良い場所で管理することで、灰色カビ病の予防につながります。発症した場合は、症状が出ている部分を取り除きましょう。それでも症状が進行するようであれば、灰色カビ病に適用する薬剤を使用してください。
うどんこ病
うどんこ病は乾燥や葉が混み合っているとかかりやすい病気で、茎や葉に白い粉のようなものが発生します。
予防対策として、日当たりと風通しの良い場所で管理しましょう。また、特定防除資材の酢が原料の製品を散布しておくのもおすすめです。うどんこ病は伝染する病気のため、見つけ次第すみやかに感染した葉を取り除いてください。
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ただし、品種によって栽培適温が異なるため、事前に確認しておきましょう。また、夏越しには「休眠法」か「非休眠法」で対応するため、時期がきたら準備を始めてください。初心者の方には、非休眠法での管理がおすすめです。
夏越しや葉組みのポイントさえ押さえれば、シクラメンの栽培はそれほど難しくありません。品種にもよりますが、基本的に花もちの良い植物であるため、ぜひ気に入った色味や花形のシクラメンを育ててみてくださいね。