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梨の育て方完全解説!初心者でも美味しい実を付ける年間作業とコツ

梨の育て方完全解説!初心者でも美味しい実を付ける年間作業とコツ

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自宅で採れたての甘くてジューシーな梨を味わえたら、とても素敵だと思いませんか。梨は、基本的な知識と手順をしっかりと押さえれば、初心者の方でも十分に楽しんで栽培することができる植物です。この記事では、品種選びから植え付け、日々の管理、剪定、病害虫対策、そして待ちに待った収穫まで、梨栽培の全てを網羅的に解説します。年間を通じた作業スケジュールや、それぞれの作業のコツも具体的にお伝えしますので、ぜひ参考にして、美味しい梨作りに挑戦してみてください。

梨栽培を始める前の基礎知識

たくさんの梨
梨栽培を成功させるためには、まず基本的な知識を身につけることが大切です。栽培する梨の品種、梨が好む環境、そして必要な道具について、事前にしっかりと確認しておきましょう。

梨の種類と人気品種の特徴

梨には多くの品種があり、それぞれ味、収穫時期、育てやすさなどが異なります。代表的な品種とそれぞれの特徴を理解し、ご自身の好みや栽培環境に合ったものを選びましょう。

よく知られているのは、「幸水(こうすい)」、「豊水(ほうすい)」、「新高(にいたか)」といった赤梨や、「二十世紀(にじっせいき)」などの青梨です。

品種名 特徴 収穫時期の目安 育てやすさ(一般的な傾向)
幸水 甘みが強く果汁も豊富。日本で最も多く栽培されている人気品種の一つ。酸味は少なめ。 8月中旬~9月上旬 普通
豊水 甘みとほどよい酸味のバランスが絶妙。果汁が多く、食感も良い。 9月上旬~9月下旬 普通
新高 大玉で、果肉はやや硬めだが日持ちが良い。酸味は少なくさっぱりとした甘さ。 9月下旬~10月中旬 やや育てやすい
二十世紀 青梨の代表品種。シャリシャリとした食感と爽やかな甘酸っぱさが特徴。 8月下旬~9月中旬 やや注意が必要(黒星病)
あきづき 「新高×豊水」と「幸水」の交配種。甘みが強く、果汁も豊富で食味が良い。 9月中旬~10月上旬 育てやすい

初心者の方には、病気に比較的強く、育てやすいとされる品種(例:あきづき、新高など)から始めるのがおすすめです。また、梨の多くは自家不和合性(じかふわごうせい)といって、自分の花粉では実がつきにくい性質を持っています。そのため、1本で実がなる品種(なるみ、おさ二十世紀など)を選ぶか、異なる品種を近くに植えて受粉樹とすることが必要です。購入する際には、その品種が1本で実がなるのか、受粉樹が必要なのかを確認しましょう。

Tips
見た目
赤梨
  • 成熟すると果皮が褐色
  • ザラザラとした斑点ができる
  • 甘みが強くて酸味が控えめ
青梨
  • 成熟しても果皮が黄緑色
  • 斑点はなくツルツルしている
  • すっきりとした甘みと爽やかな酸味

梨の生育に適した環境とは?

梨は日光を非常に好む果樹です。そのため、1日を通してよく日が当たる場所を選んでください。日照不足になると、花付きや実付きが悪くなったり、果実が十分に甘くならなかったりします。
また、水はけの良い土壌を好みます。水はけの悪さは、根腐れを起こしやすく、生育不良の原因です。もし水はけが悪い場所に植える場合は、土壌改良を行うか、高畝にするなどの対策が必要になります。
風通しの良さも重要です。風通しが悪いと、病害虫が発生しやすくなります。ただし、強風が直接当たる場所は、枝が折れたり、果実が落ちたりする原因になるため避けるようにしましょう。
庭植えの場合は、将来的に木が大きくなることを考慮し、周囲の建物や他の樹木との間に十分なスペースを確保できる場所を選びます。鉢植えの場合は、日当たりの良いベランダや庭先で管理し、移動できるメリットを活かして最適な場所に置くことが可能です。

梨栽培に必要な道具と資材

梨栽培を始めるにあたり、以下の道具や資材を事前に準備しておくとスムーズに作業を進められます。

  • 梨の苗木: 健康で病害虫のいない、根張りの良い苗を選びます。
  • スコップ・シャベル: 植え穴を掘るために必要です。
  • 剪定ばさみ: 枝を切るために必須の道具です。切れ味の良いものを選びましょう。
  • 支柱:植え付けた苗木を支えたり、枝を誘引したりするのに使います。
  • 麻ひも誘引テープ:苗木を支柱に固定したり、枝を誘引したりする際に必要です。
  • ジョウロまたは散水ホース:水やりに使います。
  • 肥料(鉢植えの場合): 市販の果樹用培養土か、赤玉土と腐葉土を混ぜたものなどがおすすめです。
  • 用土(鉢植えの場合): 市販の果樹用培養土か、赤玉土と腐葉土を混ぜたものなどがおすすめです。
  • (鉢植えの場合): 苗木の大きさに合わせて選びますが、最終的には直径30cm(10号)以上の大きめの鉢が必要になります。通気性と排水性の良いものを選びましょう。
  • 鉢底石鉢底ネット(鉢植えの場合): 鉢の排水性を高めるために使います。
  • 癒合剤: 太い枝を切った場合に、切り口を保護するために塗布しましょう。
  • 噴霧器(必要に応じて): 病害虫対策で薬剤を散布する場合に使います。
    これらの多くはホームセンターや園芸店で手に入ります。最初から全てを揃える必要はなく、作業に応じて徐々に買い足していくのも良いでしょう。

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梨の年間栽培カレンダーと作業内容

木になっている梨
梨の栽培を成功させるには、年間を通じた作業の流れを把握しておくことが非常に大切です。季節ごとに行う主な作業を理解し、適切な時期に適切なお手入れをすることで、美味しい梨の収穫に繋がります。

春の作業(3月~5月):芽出しと開花

春は梨の木が休眠から目覚め、新しい生命活動を開始する重要な時期です。

  • 芽出し前の準備: 2月下旬から3月上旬にかけて、芽が動き出す前に、前年にやり残した剪定があれば済ませておきます。
  • 追肥: 芽出し後の生育を助けるために、3月頃に追肥を行います。速効性の化成肥料などを施しましょう。
  • 芽かき: 4月頃が多くの芽が出てくる季節です。不要な芽(内向きに伸びる芽、下向きの芽、勢いの強すぎる芽など)を早めに取り除くことで、養分を必要な芽に集中させ、風通しや日当たりを良くします。
  • 開花と受粉: 4月中旬から5月上旬頃に梨の花が開花します。確実に実をならせるためには、人工授粉を行うのがおすすめです。相性の良い他の品種の花粉を雌しべにつけてあげます。
  • 病害虫対策: 新芽や若葉はアブラムシなどの害虫に狙われやすい時期です。また、黒星病などの病気も発生しやすくなるため、注意深く観察し、早期発見・早期対処を心がけます。

夏の作業(6月~8月):果実の成長期

夏は梨の果実がぐんぐんと大きくなる大切な時期です。同時に、暑さや乾燥、病害虫の活動も活発になるため、きめ細かい管理が求められます。

  • 摘果: 6月上旬から中旬頃には、つきすぎた実を間引く「摘果」作業が必要です。これにより、残した果実に養分が集中し、大きく品質の良い梨が育ちます。また、木の負担を軽減できるという点でも効果的です。1つの花房につき1~2果を目安に残します。
  • 水やり: 特に梅雨明け後の高温乾燥期は、土壌の乾燥に注意が必要です。庭植えでも土の表面が乾いていたらたっぷりと水を与えます。
  • 追肥(夏肥): 果実の肥大を助けるためには、追肥が必要です。6月下旬から7月上旬頃に行いましょう。
  • 袋かけ: 6月下旬から7月頃、果実がある程度の大きさになったら、病害虫や鳥の被害を防ぐために袋をかけることがあります。
  • 病害虫対策:病害虫が発生しやすい条件は、高温多湿の環境です。シンクイムシ類やハダニ類、黒星病などの発生に注意し、定期的な観察と適切な対処を行いましょう。
  • 誘引: 新しく伸びた枝が混み合わないように、支柱や棚に誘引して日当たりと風通しを確保します。
  • 夏季剪定: 徒長枝(とちょうし)を切り戻すことで、日当たりや風通しを改善し、果実の生育を促します。

秋の作業(9月~11月):収穫とお礼肥

秋は待ちに待った収穫のシーズンです。美味しい梨を味わう喜びと共に、来年のための準備も始まります。

  • 収穫: 品種にもよりますが、8月下旬頃から10月頃が収穫期です。果皮の色や香り、軸の状態などを見極めて、適期に収穫しましょう。
  • お礼肥(おれいごえ): 収穫が終わった木は、たくさんの養分を消費して疲れています。体力を回復させ、来年の花芽形成を助けるために、収穫後なるべく早く(9月~10月頃)に肥料を与えましょう。これを「お礼肥」と呼びます。速効性の化成肥料や有機質肥料を施します。
  • 植え付け・植え替え: 10月下旬から11月は、梨の苗木を植え付けるのに適した時期の一つです(秋植え)。また、鉢植えで育てている梨の植え替えもこの時期に行えます。
  • 病害虫対策: 収穫後も、落葉までは病害虫の防除を怠らないようにしましょう。

冬の作業(12月~2月):休眠期と剪定

冬は梨の木が葉を落とし、休眠期に入ります。この期間に行う剪定は、翌年の収量や品質を左右する非常に重要な作業です。

  • 剪定: 12月から2月頃が剪定の適期となります。不要な枝を整理し、日当たりや風通しを良くして、良い花芽がつくように樹形を整えましょう。梨の剪定はやや技術が必要ですが、基本を学んで丁寧に行うこうとが大切です。
  • 元肥: 12月から1月頃に、春からの生育に備えて元肥を施します。ゆっくりと効果が持続する有機質肥料(堆肥、油かす、骨粉など)や緩効性化成肥料を土に混ぜ込みましょう。
  • 病害虫の越冬対策: 粗皮削り(古くなった樹皮を削る作業)や、石灰硫黄合剤の散布(冬季のみ使用可能)などを行い、越冬する病害虫を減らす対策をします。
  • 土壌改良: 必要であれば、堆肥などをすき込んで土壌改良を行いましょう。

梨の剪定方法と重要な理由

収穫中の梨
梨栽培において、剪定は収量や品質を左右する最も重要な技術の一つです。なぜ剪定が必要なのか、いつ、どのように行うのか、基本をしっかりと理解しましょう。

なぜ梨の剪定が必要なのか?

梨の木は放っておくと枝がどんどん伸びてしまい、様々な問題が生じます。

剪定を行う主な目的は、まず日当たりと風通しを改善することです。込み合った枝や不要な枝を整理することで、樹の内部まで日光が届きやすくなり、光合成を活発にします。また、風通しを良くすることで、病害虫の発生を抑制するという点でも効果的です。

花芽の充実と結実を促進する点においても剪定は必要になります。養分が効率よく行き渡るようになり、充実した花芽(実になる芽)がつきやすくなり、品質の良い果実を安定して収穫できるようになるのです。さらに、樹形の維持と作業性の向上も図れます。

そして、樹勢の維持・調整も重要な目的です。剪定によって木の成長をコントロールし、若返りを図ったり、勢いを調整したりすることが可能となります。適切な剪定を行うことで、梨の木は健康に育ち、毎年美味しい実をつけてくれるようになるでしょう。

 

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剪定に適した時期と道具

梨の剪定は、主に木が休眠している冬季に行う「冬季剪定」と、生育期に行う「夏季剪定」があります。

  • 冬季剪定:葉が完全に落ちた12月~2月頃が適期です。この時期は木の活動が停止しているため、太い枝を切っても木への負担が少なく、樹形を大きく変えるような剪定も可能になります。
  • 夏季剪定:6月~8月頃、新しく伸びた枝が混み合ってきた場合に行います。主に日当たりを悪くしている徒長枝などを整理する程度にとどめましょう。強く切りすぎると、かえって樹勢を乱すことがあるので注意が必要です。

剪定に必要な主な道具としては、植木ばさみ(木ばさみ)、剪定ばさみ、高枝切りばさみ、高枝のごぎりなどがあります。枝によって使い分けるといいでしょう。

特徴 枝の直径目安
植木ばさみ 細い枝の剪定や摘芯に用いられる道具。持ち手(わらび手)が大きく、長時間の作業でも疲れにくい。 直径1cm程度
剪定ばさみ 果樹や庭木の剪定に用いられる道具。刃は半円の弧状で、持ち手にバネがついている。 直径2cm程度
高枝切りばさみ 高所にある細い枝を切り落とす道具。伸縮するパイプの先に植木ばさみが付いているものが主流。 直径1.5~2cm程度
高枝のこぎり 高所にある太い枝を切り落とす道具。伸縮するパイプの先がのこぎり状になっているものが主流。 直径2~10cm程度

太い枝を切った後の切り口には癒合剤を塗布し、病原菌の侵入や乾燥を防ぎます。はさみの切れ味が悪いと、切断面がギザギザになり、病原菌が侵入しやすくなります。常に切れ味の良い状態で剪定できるよう、使用後は刃物クリーナーなどで手入れしておきましょう。

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梨の基本的な剪定手順(冬季剪定)

梨の剪定は品種や仕立て方(棚仕立て、開心自然形など)によって異なりますが、ここでは基本的な考え方と手順を説明します。家庭菜園では、比較的管理しやすい開心自然形(主枝を2~3本配置し、中心を開けたY字型や杯状の樹形)にすることが多いです。

手順1:木全体をよく観察し、どのような樹形にしたいか、どの枝を残し、どの枝を切るか、大まかな計画を立てます。

手順2:明らかに不要な太い枝(枯れ枝、病害虫被害のある枝、極端に勢いが強い徒長枝、他の主枝の成長を妨げる枝など)を元から切り取りましょう。

手順3:樹形の骨格となる主枝(2~3本)と、そこから発生する亜主枝をバランス良く配置していきます。主枝の先端は、毎年少しずつ切り詰めて、新しい枝の発生を促しましょう(切り戻し剪定)。

手順4:側枝の整理と花芽の確保をしましょう。主枝や亜主枝から発生する側枝を整理し、梨は主に短い枝(短果枝)や中程度の長さの枝(中果枝)の先端や側面に花芽をつけるため、これらの花芽を適度に残しながら、混み合った枝、内向きに伸びる枝、下向きの枝、交差している枝などを間引いていきます(間引き剪定)。花芽は丸くふっくらしており、葉芽は細く尖っていることが多いので、見分けられるようにしましょう。

手順5:直径2cm以上の太い枝を切った場合は、切り口に癒合剤を塗布して保護します。

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夏季剪定の目的と方法

夏季剪定は、冬季剪定の補助的な役割として行います。主な目的は、日当たりや風通しを改善し、果実の品質向上や病害虫の発生を抑えることです。対象となる枝は、主に春から夏にかけて勢いよく伸びた徒長枝や、内向きに伸びて混み合っている枝、日陰を作っている枝などになります。これらの不要な枝を付け根から切り取るか、軽く切り詰めるのが方法です。ただし、夏季に強く剪定しすぎると、木が弱ったり、かえって徒長枝が多く発生したりすることがあるため、あくまで軽めに行うのがポイントとなります。また、葉を取りすぎると光合成能力が低下し、果実の生育に影響が出る可能性もあるので注意が必要です。夏季剪定は、木の様子を見ながら、必要に応じて行うようにしましょう。

梨の受粉作業で実付きを良くする

梨の花
梨の花がたくさん咲いても、受粉がうまくいかないと実はなりません。特に多くの梨の品種は、自分の花粉では受粉しにくい性質を持っているため、確実に実をならせるためには受粉作業が重要になります。

梨の受粉の仕組みと重要性

多くの梨の品種は「自家不和合性(じかふわごうせい)」という性質を持っています。これは、同じ品種の花粉では受粉しても正常に種ができず、実が大きくならなかったり、落果してしまったりする現象です。
そのため、安定して実をならせるには、異なる品種の花粉で受粉させる必要があります。この、花粉を提供する側の品種が「受粉樹」です。受粉樹には、目的の品種と開花時期が合い、花粉の量が多く、かつ遺伝的な相性が良い品種を選ぶ必要があります。
ミツバチなどの昆虫が花粉を運んでくれれば自然に受粉しますが、都市部などで昆虫が少ない環境や、天候不順で昆虫の活動が鈍い場合には、人工的に受粉作業を行うことで、より確実に実付きを良くすることが可能です。

人工授粉の具体的なやり方

人工授粉は、人の手で花粉を雌しべにつけてあげる作業です。

手順1: 花粉の準備
まず、受粉樹となる梨の品種から花粉を採取します。開花直前の蕾や、咲き始めの花の雄しべ(葯:やく)を集めましょう。集めた葯を紙などの上に広げ、暖かい室内(20~25℃程度)で乾燥させると、葯が開いて花粉が出てきます。花粉は乾燥に弱いため、採取後はなるべく早く使うか、冷蔵庫や冷凍庫で保存しましょう(長期保存も可能)。市販の梨の花粉を利用することもできます。

手順2: 受粉作業のタイミング
受粉に適したタイミングは、実をならせたい品種の花が咲いてから2~3日以内の、天気の良い日の午前中です。雌しべの先端(柱頭)から蜜が出て、少し湿り気を帯びている状態が受粉しやすくなっています。

手順3: 受粉の方法
準備した花粉を、筆の先や綿棒、耳かきの梵天(ぼんてん)などに少量つけ、実をならせたい花の雌しべの柱頭に優しく、丁寧につけていきます。一つの花房(花の集まり)に1~2花受粉させれば十分です。全ての蕾が開花するわけではないので、開花の状態を見ながら数回に分けて行うと良いでしょう。

受粉樹の選び方と相性

受粉樹を選ぶ際は、以下3つの点に注意しましょう。

1.開花時期を合わせる
主たる栽培品種と受粉樹の開花時期がずれていると、花粉を授受できません。

2.花粉が多い品種を選ぶ
花粉の量が多いと受粉しやすいとされています。代表的な受粉樹の例としては「長十郎(ちょうじゅうろう)」や「新興(しんこう)」などがあります。

3.品種の相性を確認する

品種間には交配の相性があります。よく流通している品種の中では「幸水」と「豊水」の組み合わせが有名です。
その他の組み合わせについては、苗木を購入する際に園芸店で確認するか、専門書などで調べるようにしましょう。

2本植えるスペースがない場合は、1本でも結実する自家結実性の品種(なるみ、おさ二十世紀など)を選ぶか、受粉用の花粉を購入して人工授粉を行いましょう。

梨の病害虫対策と予防法

収穫中の梨

丹精込めて育てている梨を病害虫から守ることは、美味しい実を収穫するための重要なポイントです。早期発見・早期対処と、発生しにくい環境づくりを心がけましょう。

 

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梨がかかりやすい主な病気

梨の代表的な病気とその特徴を知っておきましょう。

  • 黒星病(くろほしびょう): 葉、果実、枝に黒いすすのような斑点ができる病気です。春先の低温多雨の年に発生しやすく、ひどくなると落葉したり、果実が変形・肥大不良になったりします。予防には、適切な剪定で風通しを良くし、薬剤散布が効果的です。
  • 赤星病(あかほしびょう): 葉にオレンジ色の斑点ができ、裏側には毛羽立ったような胞子の塊ができます。近くにビャクシン類(カイヅカイブキ、タマイブキなど)があると、そこから病原菌が飛来して発生する病気です。予防のためには、可能であれば近くのビャクシン類を伐採するか、薬剤散布を行います。
  • 輪紋病(りんもんびょう): 果実や枝に同心円状の病斑ができ、腐敗する病気です。特に成熟期の果実に発生しやすくなっています。
  • 胴枯病(どうがれびょう): 幹や太い枝の樹皮が枯れ込み、ひどい場合は木全体が枯れてしまうこともあります。剪定の切り口などから感染することが多いです。
    これらの病気は、多湿な環境や、木の勢いが弱っているときに発生しやすくなります。

梨に付きやすい主な害虫

梨には様々な害虫が付きます。早期に発見し、適切に対処することが大切です。

  • アブラムシ類: 新芽や若い葉、花の蕾などに群がって汁を吸い、生育を阻害する害虫です。排泄物(甘露)が原因で、すす病が発生することもあります。
  • シンクイムシ類(ナシヒメシンクイ、モモシンクイガなど): 幼虫が果実の中に侵入して食害する害虫です。被害果は商品価値がなくなります。袋かけが有効な予防策の一つです。
  • カイガラムシ類: 枝や幹、葉、果実などに固着して樹液を吸い、樹勢を弱らせます。種類が多く、ロウ物質で覆われているため薬剤が効きにくいことがあり、冬季の粗皮削りやマシン油乳剤の散布が効果的です。
  • ハダニ類: 葉の裏に寄生して汁を吸い、葉が白っぽくなったり、ひどい場合は落葉したりします。高温乾燥時に発生しやすいです。
  • カメムシ類: 果実の汁を吸い、被害部分は変形したり、スポンジ状になったりします。これらの害虫は、こまめな観察によって早期に発見することが重要です。

 

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農薬を使わない予防と対策

できるだけ農薬を使わずに梨を育てたいと考える方も多いでしょう。完全に防ぐのは難しいですが、いくつかの予防策や対処法があります

  • 栽培環境の整備: 適切な剪定を行い、日当たりと風通しを良くすることが最も基本的な予防策です。また、水はけの良い土壌を保ち、木を健康に育てることで病害虫に対する抵抗力を高めます。
  • 清掃と除去: 落ち葉や病気にかかった枝葉、被害果はこまめに取り除き、処分しましょう。これらは病原菌や害虫の越冬場所や発生源となるためです。
  • 袋かけ: 果実が小さいうちに袋をかけることで、シンクイムシやカメムシなどの害虫や、一部の病気から果実を守る効果があります。
  • 物理的防除: アブラムシなどは、見つけ次第、粘着テープで駆除したり、牛乳や木酢液、食酢などを希釈してスプレーしたりする方法が効果的です。
  • 天敵の利用: アブラムシの天敵であるテントウムシなどを保護し、活用することも考えられます。
  • 抵抗性品種の選択: 病気に比較的強い品種を選ぶのも一つの方法です。

農薬を使う際の注意点

被害が広範囲に及んでいる場合や、手作業での駆除が難しい場合は、適切な農薬の使用を検討しましょう。使用する際は、必ずその農薬が梨のその病害虫に登録されているかを確認し、ラベルに記載されている使用方法、希釈倍率、使用時期、使用回数などを厳守してください。同じ薬剤を連続して使用すると、抵抗性を持つ病害虫が出現する可能性があるため、異なる系統の薬剤をローテーションで使用するのが効果的です。
農薬を使用する際は、周囲への飛散に注意し、保護メガネやマスク、手袋などを着用して安全に取り扱いましょう

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梨の収穫時期の見極めと方法

夕日に照らされた梨
丹精込めて育てた梨が実り、いよいよ収穫の時です。最高の状態で収穫するために、時期の見極め方と正しい収穫方法を覚えましょう。

品種ごとの収穫時期の目安

梨の収穫時期は、品種によって異なります。主な人気品種の収穫時期の目安は以下の通りです。

  • 幸水: 8月中旬~9月上旬頃
  • 豊水: 9月上旬~9月下旬頃
  • 二十世紀: 8月下旬~9月月中旬頃
  • 新高: 9月下旬~10月中旬頃
  • あきづき: 9月中旬~10月上旬頃

これらの時期はあくまで目安なので、個々の果実の状態をよく観察して収穫タイミングを判断しましょう。

収穫のサインとタイミング

収穫適期を見極めるための具体的なサインは色や大きさ、香りなど様々あります

実が品種特有の色づきをしたらそろそろ収穫です。赤梨(幸水、豊水など)は、果皮の緑色が薄くなり、黄褐色から赤褐色が濃くなってきた頃が目安になります。青梨(二十世紀など)は、果皮の緑色がやや薄くなり、少し黄色みがかってきた頃です。お尻の部分の色も確認しましょう。
また、品種固有の大きさに達し、形が整って肩が張ってきたり、お尻がふっくらとしてきたら完熟近づいているサインです。さらに、完熟に近づくと、梨特有の良い香りがしてきます。

これらのサインがでたら、いくつか収穫してみて、実際に食べてみて甘さや食感を確認するのが最も確実な方法です。
収穫が早すぎると、糖度が十分に上がらず、硬くて酸っぱい味になることがあります。逆に遅すぎると、果肉が柔らかくなりすぎて食感が悪くなったり、日持ちが悪くなったり、樹上で過熟して落果したりすることがあるので注意が必要です。

梨の正しい収穫方法と注意点

梨を収穫する際は、果実や枝を傷つけないように丁寧に行いましょう。まず収穫方法ですが、果実を下からそっと持ち上げるようにして、軸(果梗)をハサミで切ります。無理に引っ張ると、枝を傷めたり、果実の軸が取れて傷みやすくなったりするので注意しましょう。収穫する時間帯については、できれば気温が比較的低い早朝か夕方に収穫するのがおすすめです。日中の高温時に収穫すると、果実の温度が上がっており、品質が劣化しやすくなることがあります。また、一度に収穫しないことも大切です。同じ木でも、日当たりの良い場所にある果実や、木の先端に近い部分にある果実から熟していきます。全ての果実が同時に熟すわけではないので、熟したものから順番に、数回に分けて収穫するようにしましょう。

収穫後の梨の保存方法

収穫した梨は、できるだけ早く食べるのが一番美味しいですが、たくさん収穫できた場合は上手に保存して長く楽しみましょう。

・常温保存の場合
風通しの良い冷暗所で数日間保存が可能です。新聞紙やキッチンペーパーなどで一つずつ包んでおくと乾燥を防げるほか、果実同士がぶつかって傷つくのを防ぐことができます。

・冷蔵保存の場合
冷蔵庫の野菜室で1週間程度保存が可能です。新聞紙やキッチンペーパーで包んでからポリ袋に入れることで、乾燥と低温障害を軽減できます。

・冷凍保存の場合
冷凍庫で2週間~1か月程度保存できます。丸ごとだと解凍が大変なため、皮を剥いてくし形やサイコロ形にカットしましょう。カットした後は水気を拭き取ったうえで、ラップに包み、冷凍用保存袋に入れてください。食べる際は自然解凍で15~30分ほどが目安です。

まとめ

木になっている梨
この記事では、梨の育て方について、品種選びから植え付け、年間のお手入れ、剪定、病害虫対策、そして収穫まで、幅広く解説してきました。梨栽培は、確かに手間と時間がかかる部分もありますが、その一つ一つの作業に愛情を込めて取り組むことで、きっと素晴らしい収穫の喜びを味わうことができるはずです。

ぜひ、この記事を参考にして、あなたも家庭での梨栽培に挑戦し、甘くてジューシーな自家製梨を家族みんなで楽しんでみてください。

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